2023.02.27

角南被服有限会社

代表取締役 角南博和

角南被服有限会社

Q

現在の仕事に就いた経緯を教えてください。

大学卒業後はどこかに就職するつもりでいましたが、ときは就職難の時代。企業訪問先の担当者からも「家業があるのならそこへ入ったほうがいい」と言われるほどでした。せめて取引先に就職できないかと先代である父に相談したところ、いずれ辞めるくらいならば最初からうちに入ってはどうかと言われ、角南被服への入社を決めた次第です。

入社後は常務という役職に就いたものの、約10年をかけてひととおり現場のことを経験し、設備関係に疎い父に代わって、作業効率性が向上するような設備投資も行ってきました。父の死を機に代表取締役に就任したのは、私が38歳のときです。

その翌年にバブルがはじけたことで仕事が激減し、初めて10人以上の社員を解雇するなど辛い時期を過ごし、その後、リーマンショックを経て、海外向けの仕事を受注できたことで事態は好転していきました。

毎年閑散期であった10月に海外の仕事を入れることによって、年間スケジュールがくまなく埋まるようになったのです。そして現在のコロナ禍に至りましたが、数々の経験を活かしてなんとか利益を上げ続けることができています。

Q

仕事へのこだわり、
新人時代からどういう仕事観を築いてきたのか

ものづくりを生業とする限り、良いものを作ろうという意識は常にあります。しかし「多品種小ロット」といっても量産であることに違いありません。

その点に関しては、採算の合わないような100点レベルのクオリティを無理に求めるのではなく、お客様に満足して頂ける80点~90点を目指すようにしています。そして、良いものづくりを継続していくためには、業務効率化および従業員の負担軽減が重要となります。

とにかく頑張れと𠮟咤激励するだけでは必ず息切れしてしまうからです。よって、ミシン等の設備も、仕入れた状態からさらに使いやすく改良し、女性社員がなるべく力を入れずに縫製が行えるような環境作りを心がけています。

Q

「幸福」や「幸せ」について、社長ご自身のお考えや、
感じることはありますでしょうか?

経営者である以上、日々予測もしないようなことや、大変なことは多々起きます。しかし私個人のことでいえば、子供が3人いて、全員が所帯を持ち、7人の孫にも恵まれている今は非常に幸せと言えるかもしれません。

ごく当たり前のことかもしれませんが、かつての同級生達の話を聞いていると境遇はさまざまで、人によっては当たり前のことがそうではないのだと痛感させられます。よって、今は子供や孫たちの成長を身近で見守れることに幸せを感じています。

Q

今後の目標について教えてください。

ここから5年くらいかけて事業承継を行っていきたいと考えています。そのため、私が出ていくときは全体の方向性を決めるときや、なにかおかしいと感じたときのみに限り、取引先との話や細かい業務上の部分にはノータッチの姿勢を貫いています。

弊社のような規模の会社は大企業と違い、現場の業務から経理、資金繰りまですべて精通した上で、誰に何を任せるのか采配を振るう必要がありますから、時間をかけてなるべく着実に世代交代を成し遂げたいものです。

Q

最後に、若者へのメッセージをお願いいたします。

私も大学時代はかなり勉強しましたが、社会に出てから気づいたことは、人生は一生勉強であり、さもなければ時代の流れについていけないということでした。

そして、社会に出てからの勉強にはテキストがありません。厳密に言うと、テキストに載っているようなことは知っていて当たり前で、さらに必要なものを模索しながら学んでいかなければいけないのです。

そのようにしてアイデアのストックが溜まったら、次は実践です。当然、半分くらいは失敗に終わるのですが、そこには「次はこの方法で」といった新たな発想が残ります。

そしてときには人の意見も取り入れながら形にしていく、この繰り返しだと思います。皆さんも今後会社へ入ったら終わりと思わず、トライ&エラーの精神を忘れずに邁進していってください。