
現在の仕事に就いた経緯を教えてください。
1978年に工業大学の修士課程を修了してからは大手自動車部品メーカーに入社し、約20年間、開発設計業務に従事した後、複数のプロジェクトに参画したり事業部の品質保証の責任者を務めたりと数々の経験を積みました。
その後58歳のときに関連会社に転籍し、取締役として就任。当初、60歳の役員定年後はのんびりとするつもりだったのですが、前任の代表が体調を崩しことをきっかけに創業者一族の1人である私に声がかかり、弊社の代表に就任しました。
2023.05.16
代表取締役 西 保幸
株式会社東海理機
1978年に工業大学の修士課程を修了してからは大手自動車部品メーカーに入社し、約20年間、開発設計業務に従事した後、複数のプロジェクトに参画したり事業部の品質保証の責任者を務めたりと数々の経験を積みました。
その後58歳のときに関連会社に転籍し、取締役として就任。当初、60歳の役員定年後はのんびりとするつもりだったのですが、前任の代表が体調を崩しことをきっかけに創業者一族の1人である私に声がかかり、弊社の代表に就任しました。
技術畑で仕事をしてきた私は、職場の先輩や上司から「どんな些細な製品でもいいから、”世界で初めて”または”世界で1番”と言われるようなものを作りなさい」と言われ続けてきました。
その上で私自身は2つのことをモットーとして掲げています。1つ目は「あれ?力」を身につけることです。何かを見たときに疑問を感じたり、気づきを得たりできなければ、本当に人に勝てるような優れた品質のものを作ることは難しいであろうと思うからです。
2つ目は「まあいいか」という言葉を口にしないことです。先輩にはよく「お前らの”まあいいか”は人を殺すんだぞ」と言われたものですが、つまり技術の世界における気の緩みは必ずや製造品に不具合をもたらし、それは人命を奪うこともあるということです。
人は幸せを感じると、「ああ、幸せだな」という言葉を漏らします。ではその言葉が出るのはどんなときかと考えると、それは仕事中ではなく、自宅に帰ってからの何かしらのタイミングではないかと思います。
したがって私が代表としてできることは、会社や仕事で余計なストレスを与えないことではないかと考えています。仕事にやりがいが感じられない、残業が多いといったストレスが多ければ多いほど、帰り道にどこかで呑んでうさを晴らしたり、家で家族に八つ当たりしたりといったことが増えてしまうからです。
私自身現在70歳になり、これまでの人生を振り返ると紆余曲折がありながらも幸せな人生だと感じています。このような心持ちをいずれは社員達にも持ってもらえるよう、できるだけ職場環境をストレスフリーなものに整えていくことが、今の私にできることだと捉えています。
昨今はSDGsやカーボンニュートラル、半導体不足といった製造業に根の深い問題がさまざまに取り沙汰されています。しかし我々がものづくりを止めればさまざまなステークホルダーの方にご迷惑がかかりますから、簡単に匙を投げない、かつこの環境の変化に対して対応していくことが必要です。
そこで弊社が現在注力しているのは、新製品の開発や新工法の開発です。規模の小さな会社ではありますが、世界で初めて、あるいは世界で弊社しかないような独自のものを生み出すべく全社一丸となって動いています。
お伝えしたいことは2つあります。1つ目はその分野におけるプロを目指してくださいということです。世の中にはスポーツから芸術の分野まで多くのプロと呼ばれる方が活躍していますが、なぜ会社勤めの人となるとプロを目指さなくなるのか、私は甚だ疑問に思っています。
今後就職される方は、高給を貰うことや有名企業に入ることを人生の目的にするのではなく、自分のやりたい分野の仕事でプロになるということをぜひ目指して頂きたいものです。
2つ目は読書習慣を身に付けてほしいということです。読書の大きな効用の1つは先述の「あれ?力」を身に付けるために必要な知識を蓄えられることです。そしてもう1つは、人と人との接し方のさまざまな事例を身につけることができることです。
文豪の純文学でも最近の推理小説でも対人的なやり取りをたくさんインプットしておくと、自分が人間関係で悩んだ際、その事例を参考に対処できます。以上の2つのことを念頭に置き、真っ当な社会人としてきちんと歩んで頂ければ、きっと最後の瞬間には幸福な人生だったと思えるはずです。