2022.08.26

株式会社光レジン工業

代表取締役 大野仁生

株式会社光レジン工業

Q

現在の仕事に就いた経緯を教えてください。

会社は父が創業し、私は2代目です。当時は、子供が家業を継ぐのが当たり前の時代でしたが、小学生だったある日、兄が「自分はパパの仕事を継がないよ」と言いました。その時の父が寂しそうな顔をしたので、それを見た次男である私が「自分が継ぐよ」と言って、そこで将来が決まってしまいました。以来、ずっとものづくりに携わっております。

Q

仕事へのこだわり、
新人時代からどういう仕事観を築いてきたのか

社員にやりがいを感じる仕事をしてほしいと思っています。以前は、請負仕事がほとんどでしたが、そういった思いから商品の開発もするようになりました。

東日本大震災を経て、津波シェルター「CL-HIKARi」を開発しました。きっかけはある会社から依頼を受けたことだったのですが、その相手が良くない会社で、取引は中断しました。しかし、購入したお客さんには「光レジン工業のせいで納品ができない」と説明されてしまったので、それなら本当にお客さんのためになるものを、自社の技術を使って開発・販売すれば、人のためになる上に、社員のやりがいにもつながると考え、自社の商品としました。

請負のものづくりだけだとやりがいを感じにくいですが、自社商品であれば、携わった人が、自宅に帰って子どもにも自分の仕事に対して自信をもって説明できますし、やりがいになると考えております。自社商品だと、言われたものを作るだけではないため、社員も創意工夫ができると考え、注力しています。

Q

「幸福」や「幸せ」について、社長ご自身のお考えや、
感じることはありますでしょうか?

お客様の困りごとを解決できたときや、家族との時間に幸せを感じます。共同事業として取り組んでいるのが骨を混ぜたお地蔵さんです。知人の石材店で、お墓の管理ができないからと、墓じまいをする家庭が増えているため、墓石が売れなくなりました。

そこで、私からの発案で自社のプラスチックの技術を活用し、自宅に飾れる商品を開発することにしました。手のひらサイズのお地蔵さんには、成分に人骨を混ぜこんでいます。骨の色によって、できあがりの色に違いが出ます。家族が亡くなったとき、お墓に全て納めてしまうのではなく、可愛らしく部屋の中において置きやすい形にすることで亡くなった人を身近に感じられるようになるのが良さです。

ペットが亡くなったときに利用する人もいらっしゃいます。骨をすべてお墓の中に納めてしまうのは寂しいですが、お骨をそのまま部屋に置き続けるのも辛いものです。骨を少しだけ混ぜこんで身近に置いておくのが、救いになっているのではないでしょうか。プラスチックなので、希望があれば好きな形に成形することも可能です。お客さんのなかには自身で希望する形のものを持ってきて、「これと同じ形にしてほしい」という方もいらっしゃいました。そういった希望を叶えられるとやりがいを感じ、幸福感があります。

Q

今後の目標について教えてください。

津波シェルターが一家に一台、当たり前にある状態になってほしいです。また、製造業はゼロから物を生み出すことができる非常に尊い仕事ですが、ただ仕事に従事している内はなかなか世の中の役に立っていると実感しづらいことがあります。社会にも社内にも笑顔が増えるようなものづくりがより展開できれば、製造業の冥利に尽きるというものです。これらのものづくりを支えてくれる社員にも幸せでいてほしいですね。

Q

最後に、若者へのメッセージをお願いいたします。

実現可能な夢をもって挑戦してほしいです。大それたことでなくていいので、実現できそうな目標を立てて、小さくても実現させること、そしてそれが自信になって、さらに次の挑戦に進むことができます。あわせて、ものづくりの楽しさを知ってほしいです。今は、デジタルで手軽なモノづくりができるようになっています。それもいいことですが、やはり手に取れる実物をつくるのとは違うと思っているので、自分の手で手に取れるものをつくる喜びを味わってほしいです。