2023.04.19

株式会社もちひこ

代表取締役 望月伸保

株式会社もちひこ

Q

現在の仕事に就いた経緯を教えてください。

弊社は父が創業した会社で、僕は学校を卒業後に20歳で入社しました。当時はまだテントメーカーの下請けという受け身の立場で、景気の後退などから会社としては非常に差し迫った経営状態でした。最後は倒産寸前まで追い詰められましたが、そこで腹をくくって、ダメ元で飛び込み営業を始めたことが転機となり、会社は徐々に復活傾向へ。その後、28歳のときに父が亡くなり、私が事業承継する形で代表取締役に就任しました。振り返ると、入社してから最初の5年間は本当に「波乱」の一言に尽きます。しかし運良くいろんな方々に助けて頂いたおかげでここまでやって来られました。

Q

仕事へのこだわり、
新人時代からどういう仕事観を築いてきたのか

「謙虚さ」や「誠実さ」、「約束を守る」といったシンプルな基本を大切にすることです。僕は学生時代から勉強やスポーツなど得意なことがありませんでした。周囲からも、最も経営者向きじゃない人間と思われていました。ただ、父や社員達が必死に仕事をする姿を見ていたので「会社を潰すわけにはいかない」という想いだけでここまで来たようなものです。そう考えると、なんの能力もスキルもなかったからこそ、基本的なことだけを大切にしてきたと言えるかもしれません。

また、周囲の人に本当によくして頂いたので、御恩の気持ちもずっと持ち続けています。弊社ではCM放映を行っているのですが、これも御恩の気持ちからの試みでした。意図は2つあります。ひとつは、田舎でも我々のような存在が奮闘していることを地域にアピールすること。もうひとつは、地元で活躍しているアスリートや障害者スポーツの方達にCM出演して頂くことで、頑張る人達を応援すること。弊社がいろんな方々に応援して頂いたように、弊社も他の人達を応援できたら、それが「恩送り」になるのではないか、そういった想いからの試みでした。

今後はとにかく事業の継続に注力していきたいですね。2022年10月で創業35周年を迎えるので、このまま50年、100年企業を目指していけたらと思います。とは言え、今の我々を取り巻く環境を考えると「目標売上50億円」といったことは簡単には明言できません。経営は生き物を扱うようなものですから、そのとき持っているあらゆる戦力と与えられた市場環境でどれだけやっていくかが経営者の腕の見せ所だと考えています。ただこれまで弊社が助けて頂いたように、今後は何か世のため人のためになるような新しい分野の製品を開発したいと思っています。利益追求だけではなく、社会貢献できるような企業になれれば理想的ですね。

Q

「幸福」や「幸せ」について、社長ご自身のお考えや、
感じることはありますでしょうか?

幸福を一言で言うと、人を幸せにすることだと思います。よって事業を通して社員が喜んでいる、お客様が喜んでいるという状態が達成されることが自身にとっての幸福であり、また幸福経営ということを念頭においています。弊社の社是である「もちひこという会社があってよかった もちひこと付き合ってよかった もちひこの社員がいてよかった」が、まさにその考えを反映していると言えるでしょう。

具体的に言うと、社員に対しては十分な報酬が支払えたときなどは間接的にでも幸福に貢献しているのだろうと思いますし、社員自身ではどうにもならないこと、たとえば育児や両親の介護などについて何か困っていることがあるときは、会社として少しでも一助になればと思っている次第です。

Q

今後の目標について教えてください。

2023年で創業36周年を迎える弊社ですが、規模の拡大よりは、このまま50年、100年と存続できる企業を目指していきたいと思っています。もともと産業用テントに特化していた弊社が現在、工事現場用の仮設テントやスポーツ施設、屋内練習場用のテントにまで手を広げているのもその取り組みの一環です。

ひとまず満足できる状態になると、つい新しいことに挑戦しなくなったり無難に済ませようとしたりするのが人の常ですが、この変化の激しい時代においては、社会のニーズに応えられ続けなければ、企業の存続はありません。したがって、今後とも決して自分達の殻にこもらず、常に社会の空気や外部の人と触れ合うことを忘れず、積極的に用途開発を行いながら持続的な発展を目指していきたいと思います。

Q

最後に、若者へのメッセージをお願いいたします。

今の若い人達は、僕からすると非常に優秀な能力や感性を持っています。しかし社会に出るとそれだけで評価されることはまずなく、その場で必要とされるための努力が別途必要です。皮肉なことに、優秀な人ほど理想が高いので「こんなはずじゃない」と言って現実を否定してしまう傾向にあります。ひいては理想に押しつぶされてしまうことも多いかもしれません。

まずは現実を受け入れて、その上で理想を目指してください。厳しいアドバイスをくれる人に出会ったら、それだけ親身になってくれていると捉えてください。我慢すべき場面や学ぶべきポイントを謙虚に受け入れられれば、皆さんは想像以上に大きく羽ばたけるはずです。