2023.04.19

新英産業株式会社

代表取締役社長 渡辺一正

新英産業株式会社

Q

現在の仕事に就いた経緯を教えてください。

弊社は1961年に創業され、私は幼い頃から創業者である父や祖母から「お前が2代目だ」と言われながら育ちました。そのせいもあって、いつか父の会社を継ぐという思いだけは小学校高学年からはっきりと持っていたように思います。

大学卒業後は、父と4年間という期限を決め、弊社の仕入先の1社であるメーカーに就職しました。最初の3年間は勉強、残りの1年は御礼奉公というつもりだったのです。私は同社の中でも花形部署とされるハードディスクやフロッピーディスクなどの精密機械の梱包設計を行う部署にて営業職に従事しました。

しかし蓋を開けてみれば営業らしい営業はすべて先輩の仕事で、私はどちらかと言えば新用途の開拓を望まれるようなお客様ばかり回され、複雑なご要望やときには癖の強い方々と渡り合わなければいけない経験を数多く重ねました。しかし当時身に付けた対応力は、間違いなく弊社へ入社してからの武器となったと感じています。弊社へ参加した当初はとにかく新規開拓に特化して営業を行っていたのですが、その頃にはもう、先方のご要望に対して柔軟に対応すること、自分の知識やアイディアをもとに提案を行うことが楽しくて仕方ありませんでした。

そうすると先方も私が知識が豊富な人間だということで次も声を掛けてくださり、最初は取引がなかったところから月数万円、数十万円、数百万円の取引を生み出し、結果的に1年間で1億円ほど売り上げたと記憶しています。

Q

仕事へのこだわり、
新人時代からどういう仕事観を築いてきたのか

メーカーを退職した当時はバブルが弾けたばかりでした。つまり私のサラリーマン時代はバブルの只中にあったこともあり、今とは違い仕事が山のように溢れていた時代だったと思います。プライベートの予定がない日は終電で帰ることも当たり前。定時以降であっても商談の予定が入れば客先まで足を運び、夜遅くに会社に戻って図面をひくような毎日でした。

とにかく目の前の仕事と対峙していくのがやっとで、ゆっくりと物事を考える余裕などなかったのです。しかし仕事において大切なことは、「何のために仕事をするのか」「どういう仕事をするのか」と考えながら仕事をすることだと私は思っています。それがモチベーションとなり、自分の生きがいにも繋がっていくからです。そんな風に仕事ができていれば、少なくとも精神的には充実しますし、お金も後からついてきます。

Q

「幸福」や「幸せ」について、社長ご自身のお考えや、
感じることはありますでしょうか?

「幸せの3要素」は、健康・経済(お金)・生きがいと言われています。健康や経済(お金)は申し上げるまでもないと思いますが、では生きがいとは何かというと、マズローの欲求5段階説でいえば、最も低いものは「生理的欲求」で最も高次なものが「自己実現」となっています。しかし私は同じ自己実現でも、自分の為の自己実現よりも「世のため人の為に役立つ事で達成する自己実現」こそが最高の生きがいとなりうると思っています。

人は誰しも「なぜ自分は生まれてきたのだろう」「生まれてきた意味・意義は何だろう」と考える時期があります。いわばその答えを自らが体現し、実感できることこそが真の生きがいなのではないでしょうか。そして一般的な社会人であるならば、それは仕事を通じて果たされるべきだと私は考えます。だからこそ前述したように、「何のために仕事をするのか」「どういう仕事をするのか」と考えながら仕事をすることが生きがいを持つ上で非常に重要なのです。

このように自分の仕事にいかに向き合えるか、真剣になれるかが幸福を構成する重要なファクターだと思います。

Q

今後の目標について教えてください。

弊社はスポンジ、クッション材の製造加工事業を代々行ってきた会社で、これまではお客様のソファの中に入れるクッションという風に、BtoB事業をメインに行ってきました。しかしどうしても労働集約型の加工業は収益を大きく上げていくことが難しいという側面があり、現在は新規事業を2つ立ち上げているところです。

1つは、BtoCに近い事業として、機能性寝具の開発・販売事業です。日本では5人に1人が何らかの睡眠障害を抱えているとされているため、心地よい睡眠をお約束できる寝具を我々の手で開発できればと思っています。もう1つは、要介護状態を回避するための新商品の開発・販売事業です。先の超高齢化社会に向けて、国民の要介護人口を少しでも抑制したいと考えている国側の動向に合わせ、私達も新たな商品開発を通じて日本の社会課題解決の一助になれればと考えています。

いずれにおいても、ネット広告が主流になっている昨今は、我々からすると機能性の怪しい商品でも、一度火が点けば飛ぶように売れてしまうという傾向があります。そのような現象に危機感を持っている私としては、きちんとした効果・機能性のある商品を流通させ、1人でも多くの方の健康問題解決に寄与したい所存です。

Q

最後に、若者へのメッセージをお願いいたします。

私からすると、皆さんのような若者は時代に対して柔軟で、非常に優秀だという印象を受けています。そして先述の通り、生きがいとは自分が世に貢献することで生まれてきた意味や意義を見出すことです。私は皆さんが最も高次な生きがいを得るためにも、ぜひその素質と能力を存分に活かして頂きたいなと思います。そのためには仕事ということになるのですが、就職先を決める際には、あまり条件や待遇といった外面的なことにはこだわらないで頂きたいですね。

満足な条件と恵まれた環境があるからといって、必ずや自分の能力を発揮できる場所だとは限らないからです。最も大切なのは「自分の人生をかけて何を成し遂げたいのか」という思いであり、その視点で考えるのならば、日本の90%以上を占める中小企業にこそ皆さんの居場所があるかもしれません。いずれにせよ、自分や仲間内の限られた喜びにのみ目を向けるのではなく、視野を広く持ち、世のため人のための喜びを自らと生きがいと感じられるよう前進して頂けたらなと思います。